ストレージ30基搭載に挑戦
今回はPCIe x1増設実験を兼ねたストレージの追加を行っています。
現在本機のマザーボードにはPCIe Gen3 x16スロットがありますが、使用するのは1レーンのPCIe Gen3 x1の信号でストレージを増設しています。
今回PCIe x1スロットを複数に増設して色々なカードの拡張に利用できないか調べるのが目的の半分です。
もう半分は本機筐体の電源側に結構空間が開いており「何かしら増設してやらないとスペースの無駄だなぁ」と考えた末に「もうイッチョ、ストレージを増やすか」と考えに至った訳です(笑)
PCIe信号を複数に分岐させる
1つのPCIe経路を複数に分岐させて「見た目上」複数のPCIe経路にする方法があります。有名なのが仮想通貨のマイニングで使用されるPCで、このマイニングには強力なGPUの能力を必要としたものがあります。
そこでGPUの演算能力を高めるためにグラフィックスカードを1つのマザーボードに複数枚接続することで演算能力を高める手法が用いられています。
この複数のGPUを接続するのに使用されるのがPCIe信号なのですが、GPUの駆動に必要なPCIeのレーン数は1レーンあれば十分な様です。実際にAmazonなどで入手できるマイニング用とされるPCIe増設用機器は1レーン分の信号を用いる製品が大半です。
そこで私もこのPCIe信号を複数に増やす技術を「ストレージの増設」に「応用」できないか考えた訳です。
PCIe x1信号を4つに増やすカード
上の写真はマザーボードのPCIe x1信号を4つに分岐してUSB3.0コネクタで出力するカードです。
4つのUSB3.0コネクタにはPCIe x1の信号が出力されています。電源の12Vは出力されないので接続先の機器で電源を用意する必要があります。
この製品はPCIeポートマルチプライヤーと呼ばれ、PCIe Gen2 x1信号を4つに分岐できます。つまり5Gbps接続になります。
USB3.0形状のPCIe x1コネクタ
本機内蔵の為PCIe x16形状にライザーコネクタを追加
上の写真はUSB3.0形状(規格上USB3.0とは互換性はありません)のPCIe x1信号を元のPCIe x1スロット形状に延長する変換基板です。電源はコネクタ基板の電源コネクタのランドへ直接配線を半田付けしています。
また今回接続する増設カードのスロット形状がx16なので形状を合わせるためx1をx16にするライザーコネクタを追加で接続し、信号劣化によるリンク速度低下を抑えるため銅箔でシールド処理しています。(見た目かなり変ですが)
PCIe x1ポートマルチプライヤー基板を設置した様子
設置したポートマルチプライヤーはPCIe x1接続のロープロファイルサイズの基板で本機にも余裕で内蔵可能でした。
電源線を追加したコネクタ基板
新しく追加したポートマルチプライヤー基板から電源が出ていないのでマザーボードの12Vをコネクタ基板に接続しています。
動作確認
ストレージ増設カードを追加して動作テスト
上の写真は追加したポートマルチプライヤー基板にストレージカードを新たに追加して動作テストしている様子。
設置済みのストレージカードと同時使用が可能かをテストしています。
テストの結果は「何の不具合もなく普通に認識して動作」しています。何か一波乱あるかと身構えていましたが杞憂に終わりました(笑)
本機にストレージカードを増設
PCIeポートを増やすためポートマルチプライヤー基板を追加して増設カードも普通に認識して動作することが判りました。
本機筐体の電源部分に空き空間が多い為、テストに使ったストレージカードをそのまま増設してみようと思います。
ストレージカード増設
上の写真はテストの時使用したストレージカードをアルミ板に固定してPCIeコネクタ基板を接続した様子です。電源は12Vスイッチング電源から直に引き込み、マザーボードの電源ONをトリガーにしてFET SW基板でストレージカードに供給しています。
電源についてはマザーボードの電源変換基板の能力ではフル実装のストレージカードを駆動するのは厳しいと判断したための措置です。
今回追加したストレージカードはPCIe Gen3 x2接続の基板で無理やりx1にした挙句、Gen2の5Gbpsでリンクしている為想定通りの速度は出ていません。
追加したストレージカードのアクセス速度は読み出し350MB/s、書き込み300MB/s程度の速度になりました。(NGFF 1TB SSD使用時)
ちなみに先に実装していたSATAカードのアクセス速度は読み出し450MB/s、書き込み400MB/s程度あります。(2.5インチ 512GB SSD使用時)
ですが本機運用上1GbpsのLAN接続なので100MB/s程度出ていればOKということで増設は成功とします。
まとめ
マイニングに用いられるポートマルチプライヤーは普通のPCの増設用にも有用です。
- ポートマルチプライヤーはPCIe Gen2 5Gbpsの製品が安くて入手し易い
- 形状もPCIeカードからM.2 2280カードまで様々な製品がある
- ドライバ要らず
- Gen2でも5Gbpsの速度が出るとは限らない(経路のノイズ対策はしっかりと)
- 電源が別途(別経路で)必要な場合がある
- USB3.0コネクタを採用しているがUSB3.0信号は出ていない(混載注意)
- USB3.0形状の製品にはUSB3.0ケーブルが流用できる(良質な製品を選ぶ)
電源増強
本機のマザーボード側電源になる12Vのスイッチング電源を現在の8A 100Wから17A 200Wに乗せ換え。
交換した電源(中央下)
写真は交換後の様子。12V 17A(最大20A)の製品ですが構造上かなり無理をしている為、空気循環の良い環境が必須です。ヒートシンクに密着する形で二次側のコンデンサが実装されている為、高負荷な状態が長く続くと発熱によりコンデンサの寿命を縮める恐れがあります。
製品としては出力の大きさの割にサイズが小型なので非常に重宝しています。
これで本機のCPUをブーストクロック状態で駆動できるようになりました。
完成
今回で本機の加工は終了し暫定的な完成となります。
いや~長かった。
まだ所々不足部品はありますが無くても問題ない部分なので「気が向いたら」取り付ける予定でいます。
これで、Core i5-6500搭載ストレージ30基(起動ディスク含む)、うち24基2.5インチ、6基M.2 NGFF・NVMe SSD接続可能な2UラックマウントサイズのNAS PCが完成しました。